シン・ゴジラ
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シン・ゴジラ  2017. 2. 5 (Sun.) - 11. 6 (Mon.)

2016年公開、これまでのゴジラ映画だけでなく怪獣特撮を様々な面で更新した『シン・ゴジラ』について、4回見たりして日報でお伝えした感想などをまとめておきます。2017. 2. 5 (Sun.)
5回目追記。 2017. 11. 6 (Mon.)
ゴジラ再上陸  2016. 8. 25 (Thu.)

84年の復活版では静岡県伊浜原発(架空)、2001年のゴジラモスラキングギドラ大怪獣総攻撃では第五福竜丸と同じ焼津から上陸したゴジラ。ゴジラ対ビオランテでは伊勢湾名古屋港を固める防衛線の裏をかいて大阪湾から福井県の高浜原発に向かいました。

ネタバレ注意
今回のはどういうことだったのか?
鎌倉上陸の謎について一晩考え、はたと一つの仮説に思い至りました。
まず福島第一原子力発電所にマークをつけ、そこから東京に向けて直線を引いてみました。
ゴジラはたいがい東京に来るのですが、皇居は迂回する習性があるみたいです。とはいえ、皇居を通過して多摩川と接するところまで直線を伸ばしました。
下図をご覧ください。


ゴジラ迎撃作戦が展開された激戦地2地点が直線の左右数百メートルほどのところに位置しています。
さらにこの直線を太平洋まで伸ばしてみましょう。


たどりついた先は下図。


江ノ島にぶつかってしまいました。実際(と言っても映画のなかで)の再上陸地点から2キロほどずれてますが、誤差の範囲内といいますか、脚本を書くときに大まかな地図で線を引っ張られたか、絵になる都合とかでちょいずれの結果になったのではなかろうかと推察いたします。
そういうわけで東京を壊滅せしめて福一に向かおうとしたのが今回のゴジラだったという仮説が立証されました。

シン・ゴジラ  2016. 8. 27 (Sat.)

1968年の怪獣総進撃、次いで1999年のガメラ3をピークに怪獣映画自体が終わったコンテンツと化すなか21世紀にいくつかゴジラ映画が制作されてましたが、1本ケーブルテレビでやってたのを見ただけでした。
一方、実写版では大阪芸大時代の作品を超えられない庵野監督。エヴァンゲリオンについては新劇場版になってからは興味を失ってましたから、本作についても特段の期待はしてなかったのですが、オールスター競輪期間中仕事が休みだったんで、競輪だけの夏休みでいいのか?と熟考の末、立川の映画館で見てきました。映画館の会員割引的なものを利用して税込1,600円。
ガメラ3は渋谷市街戦がすごいらしいということで、わざわざ渋谷の映画館で見たのでしたが、今回は偶然の立川

結論から述べると、われわれがゴジラ映画に期待するものに見事にこたえてくれたのが本作。ポイントをまとめると以下。

1)怪獣キャラの立ち具合
2)都市破壊と逃げ惑う群衆像
3)出動する防衛隊とそれにかぶさる伊福部マーチ
4)メッセージとしての反核・原水禁

(つづく)

シン・ゴジラ  2016. 8. 29 (Mon.)

ネタバレ注意初代および84年ゴジラ同様、ゴジラ1体対人間の戦いに絞って描かれた本作。まだ1回しか見てませんが、「現実対虚構。」のキャッチコピーに結実しているとみました。
当サイトにおいては富の流れを重視して「植民地」として位置付けているわが国の在り方ですが、映画では国家主権にかかる意思決定を重視して「属国」とされています。リアリティ重視のわりには、官邸にも市ヶ谷にも朝霞にも宗主国の人がいませんが、それを途中から出てくる石原さとみが一手に引き受けています。
また、昔は宝田明や高島親、後に高島子らが背負ってたヒロイズム的なものもそのほぼすべてを石原さとみにゆだねられています。
リアリズム的にも東宝娯楽大作的にも残念な部分のほとんどを石原さとみ一人に押し付け、物語はスタイリッシュに進行します。

ところで、われわれがゴジラ映画に期待するポイント4項目。
1)怪獣キャラの立ち具合
2)都市破壊と逃げ惑う群衆像
3)出動する防衛隊とそれにかぶさる伊福部マーチ
4)メッセージとしての反核・原水禁

ゴジラ再上陸地点鎌倉1)怪獣キャラの立ち具合
これまで以上に謎の怪物性が増した今回のゴジラですが、エヴァンゲリオンではミサトさんの京都時代のアパートにもあったライアルワトソン著「生命潮流」を読んどけば理解しやすいでしょう。

2)都市破壊と逃げ惑う群衆像
昔は引きの映像で逃げるエキストラと遠景の怪獣を合成する手法が多かったですが、10年ぐらい前から一般的になった手持ちカメラを多用するドキュメント的手法や記憶に新しい災害映像が活かされています。
CGならではの放射能炎の放射は過去最大級で格段にスケールアップ。しかし、数々の名所を破壊してきたゴジラなれど今回は東京スカイツリーにもたどり着かず。名所破壊的には地味でしたが、東京の中心と福一を目指すコース上にこれといった建築物がなかったので致し方なかったものと考えます。
このコースは4)メッセージとしての反核・原水禁としても重く受け止めることができます。そしていつ再暴走するかわからない放射性物質を福島同様に東京にも抱え込むことになります。

そして本作最大の白眉は3)出動する防衛隊とそこにかぶさる伊福部マーチの復活。リアリズムあふれる自衛隊出撃および迎撃作戦の場面には現代性ある音楽がかかってたように思いますが、最後のいちばんいいとこで感涙の宇宙大戦争マーチ。さらに無人在来線爆弾全車投入! 平成期に数多く制作された子供だまし的対ゴジラ決戦兵器のすべてを吹き飛ばす破壊力に打ちのめされました。

シン・ゴジラ  2016. 9. 5 (Mon.)

ネタバレ注意2回目見てきました。わざわざ映画館にお金を払って2回も見た映画は4本目。
最初は小学生時代の「怪獣総進撃」。ただしこれはタイトルを変えて東宝チャンピオンまつりにかけられたリミックス版にだまされた形でした。
続いて悩める青年時代に見た「ヒポクラテスたち」。壮年期の3本目「24 hour party people」に続き、中年も初老の域に片足踏み入れての4本目。
このペースですと老年期の5本目が最後になりそうですが、いよいよゴジラとガメラが戦う頃合いになるのではなかろうかという予感もしないではありません。馬場対猪木は見られずに終わってしまうことが確定だけに、なんとか怪獣対決は実現させたいものです。ギャオスの日本来襲とギャオスを追うガメラの生態を「ガメラ3」で解明していた天才プログラマー(長髪)の手塚とおるが「シン・ゴジラ」では文部科学大臣に出世してました。



シン・ゴジラ音楽集  2016. 9. 15 (Thu.)

シン・ゴジラ音楽集映画の名場面を反芻したかったというわけではないのですが、連日聴き返して映画の名場面を反芻することができるサントラ盤。全32曲入り3,000円+税。
32曲といってもエヴァンゲリオンから流用の巨災対のテーマがバージョン違い数えて10曲も入ってたりするので注意が必要です。実質的に鷺巣作品10曲と伊福部作品8曲の正味の話が18曲。
もちろんお目当ては伊福部作品。とくに終盤のいちばんいいところでかかった「宇宙大戦争マーチ」。新録にあたりステレオになってたり音像が豊かになってたりしてないものかと期待しましたが、結果はビミョーです。
概ね映画の順番に配列されてるんで、前後の鷺巣新作に挟まれる「宇宙大戦争マーチ」ではボリュームを上げねばなりません。とは言え、昔買った「東宝怪獣行進曲」に収録されてるものと比べると格段の出来。ラッパの吹きそこないや落ち着かないテンポも含め、数十年前の音を残したままの豊かな残響や全面に飛び出る小太鼓などが心臓をわしづかみにしてくれます。
結局映画では昔の音源がそのまま使われたらしいのですが、半年ぐらいかけてこの音をどう作ったかの苦労話が鷺巣本人による解説で長々とつづられています。余談ながら、後半防災センターへの遷都先を立川ではなく八王子だと思い込んで書いておられていて改訂第2版では修正されることでしょう。
それはさておき、「宇宙大戦争マーチ」に比べると、エンドロールにかかってた「怪獣大戦争マーチ」のおとなしさが惜しまれます。
一昨年聴かせていただいた、渋さ知らズのラッパやチャランポランタンのアコーディオン、もちろん井上誠のシンセサイザーも加わってのゴジラ・ヒカシュー・放射能による「怪獣大戦争マーチ」が圧巻だっただけに、CD化希望。マリアンヌ東雲歌唱によるゴジラ対ヘドラ挿入歌「返せ!太陽を」もまた聴きたいです。

シン・ゴジラ日本語字幕版  2016. 10. 3 (Mon.)

ネタバレ注意3回目見てきました。今度も立川ですが「東京都立川市 日本語字幕版極上爆音上映・再上陸」ということで字幕付。
われわれがゴジラ映画に求める4大要素
1)怪獣キャラの立ち具合
2)都市破壊と逃げ惑う群衆像
3)出動する防衛隊とそれにかぶさる伊福部マーチ
4)メッセージとしての反核・原水禁

これらにかなりのハイレベルで応えてくれてるゆえの3回目なのですが、その点については8月の内に言及しているのでそちらを参照してください。

それはさておき字幕版。字幕が先に出るので「俳優が台本を読んでいる」感がつきまとうところが玉に瑕ですが、これまでより理解を深めることができました。
とくに無線の声や防護服で誰の発言かがわからなかったところ。多摩川での作戦行動では案外ピエール隊長がほとんどの指示を出しておられました。30年近く前には「東京タワーに光子力ビーム」と言ってた人がです。余談ながら熱核兵器爆撃決定時にもっとも感情をあらわになさってた臨時外務大臣も30年近く前に帝都東京破壊をライフワークにする加藤保徳で映画デビューした人でした。
終盤、スパコン計算の後、早口連発で微生物の働きも抑制せねばならないくだりもだいたいわかったような気がします。一連の発話の最後を長谷川演じる矢口が「そうだな」みたいな短いセリフで締めくくりますが、矢口の理解も我々と同程度のだいたいだっただろうと推察されます。
最終盤、「女性も安心です」と言ってほほ笑む尾頭課長代理の発言が謎でしたが、「除染も安心です」の聞き違いだったことがようやく判明しました。
国会前デモは「ゴジラを倒せ」に加え「ゴジラを守れ」の声もあったのが意外。ですが、この場面は必要だったか?の疑問は禁じえません。3回も見ると早送りしたくなる場面も出てきます。
その最たるところは防衛作戦の首都圏偏重を説明するためだけの新聞記者の会話。市ヶ谷にあるだろう作戦本部に言わせればいいものを新聞記者に言わせ、「政府も大変ですねぇ」で締めくくっています。作戦の実態を知りつつ報道しない自由を謳歌する記者クラブメディアのヘタレっぷりが容易に想像できますが、そこまで描けてたらと残念に思います。
次に国会前デモから片桐はいりがお茶を配って関係者のご苦労を高良演じる志村補佐官が説明するくだり。取材対象へのべんちゃら感が気持ち悪かったです。

逆にふくらましたらおもしろかったのにと悔やまれるのが、松尾スズキのジャーナリストが言ってた「これで儲かってる人もいるんですがね」的な一言。きっと赤坂官房副長官や泉政調副会長は相場でひと財産作ってることでしょう。
続・シン・ゴジラをやるとしたら、東京にとどまるゴジラ対策予算の使われ具合に五輪招致や市場移転をからめて山崎豊子原作みたいな社会派で1本いけると思います。

シン・ゴジラシール(おまけ)  2016. 10. 4 (Tue.)

シン・ゴジラシール昨日お伝えした日本語字幕版でおまけのシールを頂戴しました。ひとマスおよそ縦16ミリ×横48ミリのが12マス。そこに劇中の名セリフもしくは作戦名などのユニークな固有名詞がすべて明朝体で印字されています。
最初見たとき「無人在来線爆弾」が目に入ったのでちょっと喜びましたが、落ち着いてよく見るとビミョーです。
左上にある首相発言より、タバ作戦失敗時などの防衛相発言の方がよかったでしょう。2個目の矢口の名刺みたいなのより圧倒的に尾頭課長補佐のを皆欲しがってるはずです。
右列3行目の「目標が報告と違う」は「繰り返す」をはさんで2回言わないと活きてきませんし、できれば「送れ」で締めくくって欲しかったところです。
他にも「第二形態」がないとか、矢口が言っといてすぐに子供っぽいからと却下した「ゴジラ凍結作戦」を入れてもおもしろいのにとか、防災担当特命大臣の珍語録で全部固めるのもありかもなどと言いたいことは山ほどあるのですが、タダでもらったおまけなんで今日はこれぐらいにしといてやります。

シン・ゴジラ  2017. 1. 26 (Thu.)

ネタバレ注意極上爆音上映がもうすぐ終わるというので4回目見てきました。
前回の日本語字幕付き上映を見たのがよかったのか、ある種の境地に達したのか、2回目3回目にはまどろっこしかったり、こいつにこんなこと言わさんでもいいのになどと思ったところも平常心で見ることができました。テレビやビデオではありますが何度も見返した「サウンド・オブ・ミュージック」とか「いちご白書」とか「大脱走」みたいに、いつだれがどこで殺されたりとっつかまったり逃げおおせたりするのがわかっていても同程度にハラハラわくわくしながら見てられる境地。
もう映画館で見るのはじゅうぶん堪能したので、次はテレビで放映されるのを楽しみにしたいところですが、その前にDVDをどうするか問題に直面せねばなりません。
それはともかく、いつも巨災対の場面では尾頭課長補佐ばかり見てしまうなどの注目ポイントをあえて避けてみるように心がけてみたところ、特段の目新しい発見が一つだけありました。
最初の感想文で、前半はスタイリッシュにリアリズムを追及するわりに官邸にも市ヶ谷にも朝霞にも宗主国の人がおらず、石原ひとみ一人に背負わせている旨のことを書きましたが、たいへん失礼しました。直接作戦行動にはかかわらないものの、市ヶ谷に宗主国の軍人らしき人が4人ほどいて、タバ作戦失敗時にそそくさと離席するところがしっかり描かれていることに今さら気づきました。タバ作戦に限らず、並行して立案された作戦もすべて宗主国軍の承認を受けていただろうご苦労がしのばれました。

ユリイカ12月臨時増刊号『シン・ゴジラ』とはなにか
  
2017. 1. 31 (Tue.)

シン・ゴジラとはなにか2005年のムーンライダーズ特集以来およそ10年ぶりに「ユリイカ」を買ってしまいました。1,800円+税で326ページに30を超える論文の他、インタビュー、エッセイ、そして詩。

いろいろ面倒くさいんで、ゴジラ映画の注目ポイントもしくは評価軸を下記4点にしぼってる吾輩ですが、当たらずとも(無理やり)遠からずな論文集と言えないこともないです。

1)怪獣キャラの立ち具合
2)都市破壊と逃げ惑う群衆像
3)出動する防衛隊とそこにかぶさる伊福部マーチ
4)メッセージとしての反核・原水禁


キャストでインタビューやエッセイに登場するのが巨災対の学会の異端児を演じられた塚本晋也監督だったり古生物御用学者を演じられた原一男監督だったりとさもありなんな人選。これが冒頭に来てぐっとひきつけます。
詩を挟んで切通理作らわかりやすいサブカル・オタク系からの論考もありますが、その後は建築史・政治史・ロシア軍事研究・法哲学・音楽批評・表象文化論などなどさまざまな学会からのハードな論考が数点あると映画史・脚本家・映画研究といった作品に近い世界の人々からの論考が数点、これが交互に続いて読みごたえたっぷり。
ゲップをこらえつつ最後まで読めたのは、過去のゴジラ映画も含む作品を反芻できる効果もさることながら、俺様評価軸がこれでいいのか、過不足はないかという疑問をぶつけながら各論考に向き合えたからとも考えられます。で、結果としてこれでいいのだと考えるに至っております、いろいろ面倒くさいんで。

シン・ゴジラ  2017. 11. 6 (Mon.)

5回目見てきました。アニメ版上映応援企画「ゴゴゴゴ ゴジラ極爆」という立川シネマシティのリバイバルシリーズ。「キングコング対ゴジラ」を見たかったのですが日程があわず、またまた「シン・ゴジラ」を見ることになってしまいました。
去年4回見たロングラン上映中は立川シネマシティでも2番目に大きいbスタジオでした。それはなぜかというと一番大きいaスタジオがつねに前前前世でふさがったいたからでした。これまでの経験からbよりaスタジオの方が音響もいいのでは?という気がしていたのですが、実際に同じ映画を見た限りそれは気のせいだったような気がします。
それはさておき、今回は画面下部に出てくる字幕を極力見ないようにして、映像と台詞に集中するという作戦で鑑賞に臨みました。ここで何が起こるか、ここで誰がどういうことを言うか、などはすでに頭に入っているのですが、この次が何の場面かという場面シークェンスは意外と忘れがち。よって来週の地上波放送も楽しめそうです。
他にはとくにこれといった新たな発見はなかったのですが、はたと防災センターがなぜ立川にあるのかの謎が解けました。首都機能が失われたときの予備施設がなぜ立川断層真上に設置されているのかが阪神淡路大震災後に話題になりましたが、その後移設新設計画は聞きません。
日米合同委員会に出席する宗主国の軍人は横田基地からヘリコプターで都心に向かいます。それゆえ日本を支配する横田幕府とも称せられます。余談ながらトランプも横田からゴルフ場に向かいました。横田基地の近くで広大な土地が余っていたのが旧立川飛行場跡地。
そんなわけで直線距離なら基地から5キロにも満たないところに防災センター(第二首都)が建設されたと考えられます。災害に限らず、非常時には横田基地直轄下の立川防災センターで我が国の間接統治が続行される予定になっているのでしょう。

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